名古屋在住のお友達、佐橋拓くんこと「たっくん」が本を出しました。
彼とは5年前にルーマニアのブラショフで知り合いました。そうまさにこの本には出会ったときの瞬間が記録されているのです。ちなみにわたしは105ページから30ページほど「シンイチくん」として登場しています。
彼はこの原稿を5年かかって書き上げました。当初は本にする気などさらさらなかったようですが、ふとしたことで出版するはこびとなったそうです。彼の鋭い観察力と彼自身の心の動きが生き生きと表現されており、旅行記ではあるけれども旅行記を遙かに越えひとつの文学作品として味わえる完成度をもった作品です。
旅を通してひとりの人間が成長していく様が見て取れます。最初は視線恐怖症で怯えていた彼が少しずつルーマニアになじんでゆき、そしてルーマニア人との暖かい交流の中で人と人との出会いの本質を知ってゆくのです。
内容の説明はこれぐらいにします。ぼくの拙い文章では彼の作品のすばらしさが伝わらないどころか、汚してしまうかもしれないから・・・。
大きな書店になら並ぶと思いますが、もし手に入らないようでしたら私の方にメールしてください。
_/_/_/_/_/_/ 帯の文章より_/_/_/_/_/_/_/_/
精神科医 中沢正夫
巣立ちには『おののき』と『テレくささ』はつきものだ。そして『恰好悪さ』や『無様さ』も。それらを赤裸々に綴った『旅』の瞑想録である。 そこには現代の青年を理解する多くのカギがある。私はガツガツ読んでしまった。 「・・・んで、何でルーマニアなのか」って? そこんところも含めて『旅のシロート』拓くんの語りを読んでほしいな。 自分さがしの旅を考えている君! 君は、人間って二週間余りでこんなにも脱皮・成長できるものかと勇気づけられるだろう。 子どもの心が読めなくなってしまったオトウさん! あなたは、『若さ』に対する信頼をもう一度手にするはずです。 |
本文より
僕は、膝に乗った少年を降ろす前に彼をクルッと僕の方へ向け、しっかりとその小さな体を抱きしめ、別れの言葉を告げた。変な話である。たった2時間しか過ごしていないのに、心は張り裂けんばかりだ。しかしそれは少年も同じだったのだろう。僕の膝から降りた彼は、掴んでいた僕の服の袖を離さず、かえってそれをツンツンと引っ張り、僕を呼び寄せた。「どうしたの?」と彼の目線にしゃがんだ僕の太い首にしがみつき、彼は僕の頬にキスをしたのだ。僕はその少年のいじらしさに、父性にも似た感情が芽生え、力一杯彼を抱きしめた。 彼の髪の毛は、太陽と、雪解け水の・・・・・・春の匂いがした。 |
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