ロバのティールーム >> ロバのコラム目次<時系列> >> ロバのコラム_2002/02/08
梅の並木道 2002年2月8日(金)
よく訪れる場所に梅の並木道があります。いや正確に言えば並木道ではありません。私有地に梅の木が20本くらい植えてあるのですが、近道をしようとその土地を横切る人たちがたくさんいて知らないうちに道になったんです。土地を突っ切るように小道が出来ていて、それを挟むように梅の木がならんでいます。その場所に隣接する場所に住む友人から聞いたのですが、少なくとも20年前ぐらいからそんな状態だったようです。この時期になると、梅たちは一斉につぼみをつけ、今にも花を咲かそうと準備をしてひたすらその時をまっています。
今年も梅のつぼみがついたことを彼女から聞きました。しかしその後間もなく非常に悲しいニュースを聞くことになりました。それはその並木道がなくなってしまった、という話でした。詳しく事情を聞くと、その土地は駐車場に代わってしまったというのです。それも1日のうちに・・・。その友人がある日家に帰ると、いつもの梅並木の景色消え、殺伐とした砂利の敷き詰められた「空間」と、その片隅に折り重なる梅の木の「死体」を目の当たりにしたのです。あまりの劇的な変化にその友人は呆然としたそうです。ぼくのその話を聞いてその場所に見に行きましたが、あまりのショックに思わず涙ぐんでしまいました。僕自身はその場所を知ってそんなに長くないのですが、その変わり様には唖然としました。子供の頃から梅並木の風景に慣れ親しんできたその友人にとっては僕以上のショックだったであろう事は容易に想像がつきました。
ぼくのショックの要因にはふたつの理由がありました。一つは好きだった風景との別れ、寂しさです。お気に入りが現実世界から消滅して、思い出の世界の中のものになるのは悲しいことです。もう一つは、梅の木の死。もうすぐ花を咲かせようと準備をしていた命の営みを断ち切ってしまったということです。成就寸前の可能性をつみ取られることほど悲しいことはないですね。せめて花が咲くまで・・いや、ずっと切ってほしくないね。