会合日時:1997年9月 日

 

レジメ担当者:いしわたり

 

歴史とは何か?

 

歴史とは何か

 みなさん「歴史」は好きですか?

「だいすき~」って答える人も、

暗記ばかりで大嫌いって人もいるでしょう。

ちなみに僕は歴史が大好きです(じゃなきゃ、こんなテーマは選ばないよね)

でも「自分のルーツは何なのか」とか、

「世界はどのようにして今の姿になったのか」という問いはみんな持っているはずです。

この問いが歴史学への第一歩なのです。

では、その「歴史」について少し考えてみましょう。

 

注)歴史とは・・・ 過去の具体的な出来事 と その記述

 

1)歴史は時間を強く意識した学問である。

 当たり前の事ですが、まずここから出発しましょう。歴史から時間をとったら何も残りません。世界の断片(政治・経済・文化・自然などなど)を時間軸に沿って連続的に語るのが歴史です。明らかに他の学問と視点がちがい、あらゆる学問を包含しています。しかし、切り口である各々の学問から見たその学問の変遷、すなわち経済学には経済史、政治学には政治史とその学問の下に専門史を置かれたら、歴史学の存在意義はなくなってしまうのでしょうか?

<< 2つの見方 >>

 個別記述の多元的な「分ける」思考(専門史)と、

 世界全体を一つの主体と考え、その変遷をたどる歴史の考え方(世界史、歴史)

関連事項・・・「時間とは何か」(加藤さん)

 

2)歴史の個別性と普遍性

 歴史から普遍的な部分を取り出すことはできるでしょうか?それとも歴史的事実は1回1回が特殊なケースばかりで個別性しか存在しないのでしょうか?

つまり歴史に法則を適用できるか、一般化は可能か、ということです。

例えば、「革命の法則」

 生産力の低下--->貧困層の増加--->不満分子の増加--->反乱・・・?

という感じにです。この程度までおおざっぱな説明は出来るでしょうが、これでは科学とは言えませんね。もっと論理的な説明ができれば歴史学は晴れて科学の仲間入りができるでしょう。

<< へンぺルによる方法 >>

法則演繹型説明・・・説明されるべき命題E、法則L、初期条件Cのとき

         Eが既知ならば、LがもとにCが原因だったと説明可能(因果律)

         しかし、歴史の場合、L,Cが分離不可能(複雑すぎる)

帰納的蓋然的説明・・F種の出来事が起こるならばG種の出来事が起こる可能性が1に

         近ければ、Fが起こる条件が与えられればGが起こる

       例)「はしかにかかっている人の側によるとはしかになる」

           の蓋然性が1に近いと

         「次郎ははしかにかかっている太郎のそばに寄った」から

         「次郎ははしかにかかる」と説明できる。

 

歴史の「一般化」は、はたして意味があるのだろうか??

 

3)歴史における自由と必然

 歴史は起こるべくして起こるのでしょうか?人間(個人)の意のままにつくれるのでしょうか?

例えば、ナポレオンという個人は当時のヨーロッパを根底から揺るがしました。その後のヨーロッパの政治制度に多大な影響を与えました。では、彼が思い通りに歴史を動かしたのでしょうか?それとも当時、時代は彼のような軍人の登場を予定していたのでしょうか?

<< ヘーゲルの予定調和論 >>

 英雄は歴史の実体である世界精神(理性)の傀儡であり、世界精神の自己実現過程においてその一時期に必要な役割を与えられるに過ぎず、その役を終えると彼は歴史の舞台から消える運命にある。・・・歴史は個において自由、類において必然。

(思いっきり観念論)

 

4)発達史観・進歩史観への疑問

 はたして人類は進歩しているのでしょうか?確かに生産性は大昔より明らかに向上しています。また、民主制は封建制より進歩した制度に見えます。

その反面、歴史は繰り返すという循環史観もあります。

いったいどっちなの、それとも両方??

<< 歴史は繰り返す・・・トインビーの文明論 >>

 生物の個体が発生・成長・死の過程をたどるように、文明の有機体も発生・成長・解体の過程をたどる。

(第1次大戦直前のバルカン半島とペロポネソス戦争直前のギリシャ諸ポリスの政治状況があまりにも酷似していることに気が付いた)

 

5)歴史の語り方(書き方)について

  歴史は文学にすぎないのでしょうか?話者の歴史観が論理的帰結を左右します。

  歴史学の方法は以下のとおり。

  @ 史料など--->分析--->当時の世界を想像(歴史家の心の世界の中で場面を再構成) 

  @  --->評価・動機づけ(歴史観の介入)--->記述。

  @@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@

 民主主義の時代の私たちに封建制の時代の感覚を理解することはできない。

 「事実を見る前に歴史家をみろ」(カー)

 筆者の歴史観は歴史を記述するとき、その文章に大きく影響する

<< 歴史観は大きく2つに分けられる >>

 a)先入観・・・歴史家個人に張り付いていて彼の見方を一つの方向に導くもの

         好き嫌い、利害、宗教的信条、社会的立場、イデオロギーなど

 b)説明仮説・・対象をそのものとして客観的に導くもの

         数学的・心理的・経済的・・・な理論や公理、社会的制度の定義など

 

6)歴史の新しいながれ

 既成の歴史学は主に政治・国々の興亡・事件を扱ったものが主流でした。しかし最近、今までの目立った事件の列記から歴史をみる見方に批判的なアナール学派という一団が登場しました。彼らは歴史の説明をその事件を起こさせた社会的構造に求めています。

 

 

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