中東イスラーム世界というと、おそらく馴染みの薄い人の方が多いはず。
一般的には、イスラム教というなんだか戒律の厳しそうな宗教を信奉している人が住んでいて(1日何回かひざまずいてお祈りをするシーンを思い出すのでしょう)、たまに爆弾テロをやるイスラーム原理主義者たちがたくさんいて、なんだか得体のしれない不気味な世界、なんて思っているひとが多いのではないでしょうか??
それは中東イスラーム世界のある一部分にすぎないのです。実際には様々な国があって、様々な人がいて、多様な文化をもつ地域です。西欧近代法をもったトルコやエジプトみたいな国があり、またサウジアラビアのようイスラーム法によって運営されている国があったり、イランのようにイスラーム法と西欧近代法のチャンポンでなりたっている国があったり・・・。
1日に何回もお祈りする熱心なイスラーム教信者がいたり、はたまたラマダン(断食月)の時に堂々とメシを食う人がいたり・・・。また、アラビア語を話す人、トルコ語を話す人、ペルシア語を話す人、ときにはコプト語を話す人。
イスラーム世界には非イスラム教徒も住んでいます。概してイスラム教徒は異教徒に対し、自分たちに害が及ばない限りにおいては寛容です。ジハード(聖戦)といった言葉の確かに存在しますが、この言葉の真の意味は「説得しても直、武力で立ち向かってくる者に対しては戦いなさい」ぐらいのものなのです。ですから、イスラム教徒が好戦的である、というのもやはり偏見であるといえます。
時々起きるテロも一部過激派によるものです。イスラーム世界に住む人たちも日本と同じで、右翼もいれば左翼もいますし、保守もいれば革新もいる。自分たちの理想国家(イスラム国家)の実現のためにはテロも辞さず、という者もいれば、そうでない者もいる。一部の情報からその世界全体のイメージを形作ってしまうのは
あまりに危険なことだ、と感じることがよくあります。
中東とは、一般的に左の地図中のグリーンで示した地域を指します。東はアフガニスタンから西はモロッコ、北はトルコから南はスーダンまで。これらの地域の住民の多くははイスラム教徒で占められています。
しかし当然のことですが、住民の全てがイスラム教徒なわけではありません。例えばエジプトには人口の1割を占めるコプト教徒(キリスト教単性論)が、レバノンではアルメニア正教・マロン派などのキリスト教徒が人口の多数を占めています。また、イスラエルには多くのユダヤ教徒が住みますし、モロッコやイエメンにもユダヤ教徒が住んでいます。
人種的にはアラブ人の他に、ペルシア人(イラン)、トルコ人(トルコ)、ベルベル人などがあります。
言語はアラビア語を話す人が多数を占めますが、他にトルコ語・ペルシア語・
パシュトー語・ヘブライ語などが話されています。また以前に西欧列強(特に英仏)の
植民地や保護国であった国では、英語・フランス語がよく通じたりします。