スカシカシパン研究会  ≫ スカシカシパンとの出会い

 

 

みなさん、右の写真を見てください。これ、なんだと思いますか???

これは、今年の夏、房総・館山で海水浴をした際に浜辺で拾ったものです。

陶器のような質感で、大きさも10センチ強、これが砂浜にポツン、ポツンと落ちているのです。それを拾い上げたとき、最初は瀬戸物か漁具あたりの人工物かと思いました。しかし、じっくり観察してみると表面に細かい組織があるのがわかりました。人工物がこのようになるはずがないので、生物の一種であると結論づけました。しかし、このような生物をみたことがなく、とりあえずこの物体を自宅に持ち帰ることにしました。

 

 数日後、会社の近くの図書館で海洋生物図鑑(「海辺の生きもの」)を借りました。そして、それにもっとも似ている生物を探しました。 ココウニの項目にさしかかったとき、非常によく似た生物を発見したのでした。その名は、「スカシカシパン」、へんてこな名前の生物だなぁ、というのが最初の印象でした。その図鑑に載っていたのは、当然彼らが生きているときの姿、茶色くて全面が毛のようなもので覆われていました。ぼくが拾ってきたモノは真っ白の陶器状、おそらく彼らが死んだ後に有機物が分解され、彼らの骨格だけが残ったものだろうと推測しました。

 

 さらに数日後、池袋の大きな書店でこの「スカシカシパン」についての書物を探していました。生きた姿を載せた書物はありましたが、骨格についての書物は見つかりませんでした。とりあえずそれらの図鑑などを購入しようと、レジの前で並んでいると、レジの横に海岸漂着物に関する文献をおいたコーナーを発見しました。それらは三浦半島の葉山しおさい博物館が発行した文献でした。いくつか並べてあったうちの「三浦半島 海岸打ち上げ物(2)海洋生物編」を手に取りみてみると、三浦半島の海岸で拾うことのできる貝殻・ウニの殻・フジツボ・ヒトデの死骸・エビやカニの死骸などを写真入りで紹介していました。そしてその中に、ななななんと、スカシカシパンの骨格があったではありませんか。真っ白で陶器状でまさに僕が房総の海岸で拾い上げた「謎の物体」がそこにあったのでした。

つづく【2000.9.22】

 

 

 

「スカシカシパン」がいた場所

 

 スカシカシパンの骨格を拾った場所は、房総半島の突端近く、館山です。詳しくいうと、館山市内から洲崎方面へ向かう途中の海水浴場がその場所です。ここは館山の湾の南岸に位置し、東京湾の最南端に位置しています。その砂浜に多くのスカシカシパンの骨格が打ちあがっていたことから、この海岸から少し沖にいったところに彼らは住んでいるのでしょう。文献によると、彼らは水深3m以上の海底の砂の中にもぐって生活しているようです。

 

 この海水浴場はこのあたりでも比較的穴場の海水浴場です。海の家は1件、海岸線の西端にあります。そこから東に砂浜が200メートルくらい続き、そして小さな磯場があって、さらにその先でも砂浜と磯場が交互に現れます。砂浜では、スカシカシパンのほかにハスノハカシパンの骨格や貝殻、などを拾うことができます。また海では、ゴンズイアンドンクラゲ水クラゲを見かけました。一方、磯場のほうは、あらゆる魚や磯の生物が存在します。魚では アジサバカレイカワハギなど数え上げたらきりがないほどの魚たちを見かけました。また ウニイソギンチャクフジツボカメノテなどの海洋生物も見かけました。しかし生きたスカシカシパンにはあうことができませんでした。

 

 この海水浴場から東に数キロ、館山市内にもどったところに「沖の島」という房総半島と砂州でつながった島があります。ここは世界最北端の珊瑚の生息地として有名だそうです。珊瑚のほかにも多くの海洋生物が生息していると、あるホームページでは紹介されていました。その延長線上にこの海水浴場があることから、ここの海水浴場近辺もそれと同様な生態系のあるのではないかと思うのです。【2000.9.22】